種を蒔く料理船越雅代

Saag Pannerのような
大和まなと厚揚げの炊いたん

大和真菜の原産地、奈良の郷土料理に「大和まなとお揚げさんの炊いたん」がある。
くったくたになった菜っぱがたまらなない料理だ。お出汁とお醤油の代わりに、クミンとターメリック、にんにく少しとレモン汁と塩、Farmoonのご近所清水豆腐の美味しい厚揚げをチーズに見立ててインドの菜っぱとチーズの一品、サグ・パニールに。

大和真菜は、古事記にも登場している日本古来の野菜。生でサラダでも煮ても炒めても美味しい。個性は強くないけどどんな役柄でもこなせる上手い役者、名脇役。岩崎さんの大和真菜は、クセがない野菜ながらも「僕、岩崎さんとこから来ました。」という佇まい。生で味見すると止まらずにむしゃむしゃ兎のようになってしまった。

今回はインドの古い石の器とあわせた。鉱物を削り出すその原始的感覚は、在来種野菜の持つ生命力にとてもあう。


料理
船越雅代
インドの古い石皿
写真
八木夕菜
Atelier NOW/HERE
船越雅代

船越雅代
Pratt Institute で彫刻を専攻後、料理に表現の可能性を見出し、NYの料理学校を卒業。Blue Hill をはじめとするNY のレストランに勤めた後、ヨーロッパからアジアを放浪。
オーストラリア船籍の客船のシェフとして大平洋を巡り、バリの老舗ホテルのシェフ、京都でレストランkilnの立ち上げに参加、シェフ/ ディレクターを務め、現在、食の可能性を追求するスタジオ“Farmoon”オーナー。
国内外でサステナブルな食・文化・アート・デザインを融合した活動を展開中。
東アジア文化都市 奈良市 2016 食部門ディレクター

選んだ野菜

大和真菜

大和真菜は古事記に記述のある「菘菜」をルーツとすると言われ、漬け菜の中でも原種に近い品種と考えられている。寒さが厳しくなると甘くなり、おひたし、煮物、炒め物と様々な料理にあう。奈良県内では味の良さと栽培のしやすさから農家の自家採種で自給を中心に育てられてきた。見た目よりも味で受け継がれてきた野菜である。

関西のある会議の中でこの大和真菜に惹かれ守ってきた生産者が、岩崎さんの雲仙赤紫大根の物語をきて感動。「ぜひその種がほしい」と申し出て、岩崎さんが種を送ったところ、お返しに送られてきたのがこの大和真菜の種だったそう。

以来、岩崎さんの畑に暮らし始めてすでに20年以上の歳月が経つ。岩崎さんはそのさりげない姿がもつ特有の神秘的な風味と「真菜という神に捧げるような」名前に惹かれ、大切に守ってきた野菜である。

種を蒔く料理

江口研一food+things)

器 ‖松本かおる
写真‖在本彌生

北嶋竜樹neutral)

器 ‖須恵器
写真‖八木夕菜

船越雅代

器 ‖インドの古い石皿
写真‖八木夕菜

今井義浩monk)

器 ‖陶片、棚板 陶板
写真‖八木夕菜