INTERVIEW with ILL-BOSSTINO

03

憧れ

幸運にも先輩や街に恵まれてるのが全ての根源」

I:2ndのソロ(アルバム)に入っている「STARS」では憧れについて歌っています。僕自身、若い頃に遠い星に見えたシェフ達が時間とともに見え方が変わってきていて、ちょうど“憧れ”について考え直しているところでした。今、BOSSさんには憧れの存在はいますか?

B:たくさんいるね。音楽に関しては、憧れを追いかけてるって人は多いんじゃないかな。HIPHOPなんか特に、楽器弾けない人間がやってる音楽だから、憧れの度合い、気持ちの部分が強くないとできないよなと思う。俺は中学生ぐらいの頃から聴いていた人達で、今でもやってるような人達の背中をずっと見続けてる。そういう人達も年老いていくし、昔ほどのパフォーマンスはもちろんできないけど、でも年老いたなりの表現やってんのを見ると、良いなと。かっこ良いなと思う。

I:僕は昔だったら料理雑誌見て、すげえ! このシェフみたいになりてえ! と思っていたんですが、最近はそういう憧れみたいなのがあんまりなくて……。

B:そうなんだ。ふーん。危ういな。

I:えっマジっすか!?

B:危ういぞ。まあ、でも人それぞれ。けど、俺はそういうふうになったことは一度もない。札幌の先輩達の音楽的知識とか理解度とか音楽に対する熱意っていうのが永遠に差が縮まらない中で生活して、25年間ずっとここまできてるから。先輩達が本当に音楽愛して、音楽のために生きて、音楽に殉じて死んでいく。俺もあんなふうに音楽に愛されたいと思う。それを毎月ダンスフロアで見て聴いて、感じることができる。俺が音楽をやり続けられているのも、今こうして何か偉そうに話せていることも、幸運にもそういう人であり街に恵まれてるっていうのが、全ての根源だね。

I:BOSSさんが先輩と呼べる人が、札幌にはそんなにたくさんいるんですね……。

B:うん、いっぱいいる。俺52で、俺よりずっと年上の先輩がいっぱいいる。札幌以外の街だと、ダンスフロアに行くと、俺と同世代とか年上の人ってほぼいない。でも、札幌のダンスフロアに行けば「お前まだそのブルーハーブ? あれやってんの? 頑張ってるね」とか言ってくれる先輩もいるし、「お前この曲も知らないの?」なんて(先輩に)言われても「はい! 教えてください!」て素直に返せる(先輩との関係がある)。

世の中的にTHA BLUE HERBがどんなに有名になっても、リキッド1000人(のライブ)とかを経ても、札幌に帰ってきて、またいつものスニーカーとTシャツになってダンスフロアで踊ってる時、本当に思うよね。あーよかったな、俺ここの人間でって。もしも、自分の音楽を良いって言ってくれる人だけに囲まれて、ずっと評価される場所にいたら絶対続けられなかった。(札幌で)ああいう人達がいる世界に囲まれて、ずっと中堅のちょっと下ぐらいの世代で生きられているから。ずっと謙虚でいられる。もっと頑張ろうって思える。

I:「STARS」では年下のJEVAさんとの掛け合いが印象的で、僕は大好きです。BOSSさんからJEVAさんにオファーされたと聞きました。

B:ありがとう。「STARS」俺も大好き。JEVAのこと見ても、もう伸びしろしかないよって思うからね。特に「STARS」みたいな、自分の気持ちを思い切り出せる曲だったら、やっぱりJEVAみたいなね、そういう原石というか本当に輝いてる人と一緒に作りたかったから、(曲作れて)本当に良かったよ。ラッパーもそうだし、何だって若い方が絶対良いよ。失敗もできるし、時間あるし、やり直せるし。若さに勝てるものはない。絶対そう。だからある意味、自分も先輩達にくっついて中堅の下ぐらいの年キープしてるのは、疑似体験としてずっと若い感覚でいたいからなのかもしれない。

お店、何年経ったんだっけ?

I:9年目です。憧れの存在……。危うい、と言われてドキッとしたんですが、めっちゃ嬉しかったです。