松本から福島へ「井戸を掘る」

写真:疋田千里、題字:ウチダゴウ

会場

食堂ヒトト
OOMACHIGALLERY ほか
福島県福島市大町9-21ニューヤブウチビル3F
google map
Exhibition:

「アルプスごはんのつくり方」写真展

松本で食の仕事をしていくと決めた料理研究家・金子健一さんと一緒に、同じ土地に向き合う農家さんを訪ね、言葉を交わし、食事会を開きました。1年を通じて行われた、この取材とイベントの様子を、日記のように綴った本が『アルプスごはんのつくり方』です。この本に収録された写真を中心に、写真家・疋田千里さんのファインダー越しに切り取った、松本の風景を展示します。

Market:

松本から福島へ

お一人お一人へ手紙を手渡すように、様々なアイテムを販売します。

01.vegetable

松本の農家さんの野菜

02.Kitchen utensils

大久保ハウス木工舎の台所道具

03.Books

栞日セレクトの独立系出版物

Food:

松本から福島ごはん

料理家、金子健一さんがオススメする松本の農家さんの野菜と、福島が誇る素晴らしい野菜の出会いをヒトト定食でお届けします。

Project:

本の井戸

会場‖栞日、Books&Cafeコトウ

栞日とBooks&Cafeコトウ連動企画。松本と福島のそれぞれのブックカフェでそれぞれの店主が、我が街の文化の井戸を掘るために、自分の店の棚に加えることを決めた本たちを、お互いの街で発表しあう企画です。期間中、ぜひそれぞれのお店へお出かけください。

Event:

松本酒場

日付‖12月15日(金)
時間‖19:00─22:00(LO21:30)
会場‖食堂ヒトト

信州が誇るうまい日本酒と松本の素晴らしい野菜を使った料理を堪能していただく特別企画です。 予約不要、酒好きもそうでない方もお気軽にお立ち寄りください!

Talk:

クロージングトーク

「井戸を掘るひと」

日付‖12月16日(土)
時間‖18:00─21:00
会場‖食堂ヒトト

第一部‖アルプスごはん、いただきます。

松本在住の料理家 金子健一さんが松本、安曇野の農家のその生き方と哲学を1年かけて追いかけた1冊「アルプスごはんの作り方」。 金子さんが作るアルプスごはんのワンプレートをいただきながら、街と畑が繋がり循環するその試み、本づくりという挑戦を経て生まれた佳き変化についてじっくりお話を伺います。

金子健一

疋田千里

司会‖菊地徹

第二部‖街の文化の深め方

東京というハブを介さずとも、地方の街同士がダイレクトに対話することで、お互いの街に新しい風を呼び込み、それぞれのカルチャーを耕し、深めることもできる時代が来ています。 各々の街で自分の井戸を掘ることに懸命な個人と個人の対話こそに、然るべき道を拓くきっかけが潜んでいるのではないでしょうか。松本と福島で、それぞれの店を構え、街を眺め、理想を描くふたりが話します。

薮内義久

菊地徹

司会‖奥津爾

申し込み方法

料金‖3,000円(お食事とワンドリンク付き)

‖ご予約‖
・店頭またメールにて
・Mail. hitoto@organic-base.com
 件名を「12月16日参加希望」として、
 お名前、人数を明記の上、お申込みください。

Profile:

金子健一│かねこ けんいち

料理研究家。2005年に物書き料理家のマツーラユタカとともにフードユニット「つむぎや」を結成。雑誌や書籍へのレシピ提案、ケータリング、食のイベントなど幅広く活動中。現在、奥さんの地元長野県松本市に移住。2017年6月松本にカウンター8席だけの小さな食堂〈Alps gohan〉をオープン。7月にはご縁のある松本、安曇野の農家さんや木工作家さんの日々を一冊にまとめた『アルプスごはんのつくり方』が完成。著書に『ぱんぱかパン図鑑』、『和食つまみ100』、『あっぱれ!おにぎり』など。

菊地徹│きくち とおる

書店・喫茶店〈栞日〉店主。1986年生まれ。静岡市で生まれ育ち、大学進学でつくば市へ。在学中のコーヒーショップでのアルバイトがきっかけとなって、将来自分で店を構えることを決める。卒業後、就職先の旅館が松本市にあったため転居。ほどなく軽井沢町のベーカリーに転職したが、松本市街地の規模感や城下町気質、自然との距離感などに惹かれ、松本市に戻る。2013年8月、〈栞日〉開業。2016年7月、同店移転リニューアル。2014年より毎夏、ブックフェス「ALPS BOOK CAMP」を開催。
http://sioribi.jp
http://alpsbookcamp.jp

薮内義久│やぶうち よしひさ

OPTICAL YABUUCHI代表取締役
1979年 福島市生まれ
日本眼鏡専門学校を卒業後、雑貨店勤務などを経てイギリス留学、英語、デザインなど勉強をし、福島にもどりセルフビルドで店舗を設計施工をし、商いを始めた。 また眼鏡の販売以外にもオリジナルブランドCOYAの開発、デザインを行っている。 そして古い自社ビル、藪内ビルの空きテナントを13年かけてリノベーションし、多数の仲間と共にテナントに入居してもらい、福島の文化の発信基地を作ろうとしている。

Message:

松本から、福島のみなさんへ

菊地徹‖栞日

もう店は当分やらない、と言っていた奥津さんが、〈食堂ヒトト〉を福島で再開します、と宣言したとき、周りの誰もが驚いた。いま飲食が一番難しい場所だから、と奥津さんは続ける。常に挑む姿勢を崩さない奥津さんらしい決断だ。でも、それだけではない気がした。雲仙に家族と暮らし、吉祥寺に料理教室の場をキープしつつ、さらに福島で店を営む。よほどのことがなければ、三拠点など選ばない。その「よほどのこと」が何なのか、知りたかった。訊くと「呼んでくれた人たちがいた」と言う。

昨年十月、移転した〈食堂ヒトト〉を目指して、初めて福島を訪ねたとき、その「呼んでくれた人たちに会うことができた。そして、腑に落ちた。彼らに「必要」と求められたら、断る道理が見当たらない。屈託ない大きな笑い、全力で考え抜こうとしている人にしか宿らない鋭い眼差し、目の前の相手を常にリスペクトして学び取ろうとする謙虚な構え。そのどれもが、痛快で、あたたかい。この街に起きた一切を引き受け、腹をくくり、真正面から現実に向き合い、あたらしい明日を拓くことに、各々の精一杯を尽くしている。彼らのあらゆる言動から、そのことが滲み出ていた。でも、息の詰まるような重苦しさは漂っていない。深刻でも神妙でもなく、真剣なのだ。彼らは彼らにしか掘れない井戸を、ただ実直に掘り続けていた。

初対面で夕食を共にし、笑い語らい合った翌朝、藁谷さんが「風呂に行きましょうと飯坂温泉に連れ出してくれた。熱い湯に浸かり火照った身体で、今度は信夫山に向かう。木立を駆け抜ける初秋の風に、頭も心も澄み渡っていく。山頂に着いた。ここからの眺めが忘れられない。福島市街と安達太良山と阿武隈川。街と山と川なんて、どこにでもある風景かもしれない。けれど、僕はそこに愛しい我が街を重ねていた。弘法山から眺める松本の街と北アルプスと梓川を。

藁谷さんが自宅で淹れてきた珈琲を注いでくれた。啜りながら彼の仕事の話を聴いた。高校時代から通い続けた服屋があって、服とは何か、そこで教えてもらったこと。いまはその服屋で働いていること。今度は自分が、服とは何か、伝えていきたいと考えていること。なんて幸せな連鎖だろう。世代間の価値観や理想の隔たりに悩み患う街は多い。福島には若者が憧れるに足る大人が確かにいて、その背中を追いかけてきた彼らが、いま次世代を育もうとしている。それも極めて自然体で。羨ましい限りだった。自らが暮らす街の文化を耕すことは、他ならぬ自分たちの務めであるとよく承知した上で、己のフィールドで実践している住人が、そこかしこに居るのだろう。

人が心惹かれる街には、我が街のことを想いながらも、自らの役割を全うすることに集中しているプレイヤーが、必ず幾人も点在する。その一人ひとりの取り組みが、ここぞというとき星座のごとく結ばれて、ひとつの目映い輝きを放つ。その光こそ街の個性だ。今日と明日の景色をつくる本質的なエナジーだ。福島にはきっと、この光を自在に操る素地がある。そして、そのような街の体質こそ、松本が目下アタックしている次のステップで、僕らが福島に学ぶべきことは余りに多い。

見たい景色を自らの手で描くことに真剣な街と街が、ダイレクトに対話をしたら、どんなに刺激的だろう。ずっと考えてきたけれど、福島で彼らと出会って、いよいよイメージが鮮明になった。松本と福島でセッションしたい。初めて訪れた日からの願いが、ついに叶う運びとなり、喜び勇んで再び福島の土を踏む。今回の集いが、それぞれの井戸をより深く掘るためには欠かせない視座を示してくれる。そう信じて、いざ。